「いい歳したおやじが、ラブコメアニメのブログなんて書いてどうするんだ?」
笑う奴は笑えばいい。だが、俺にはどうしてもこの『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』という作品を、自分の言葉で語り残しておきたい理由がある。
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俺は平成4年から約32年間、LPガススタンドのフロントとして、危険と隣り合わせのスタンド設備を守ってきた。 現場の仕事は過酷だ。特に夜勤の拘束時間は「16時間」にも及ぶ。
忙しい時間と暇な時間が入り混じる中、いつ来るかわからない車両を待ち、気を張り続ける孤独は、経験した者にしかわからないだろう。
そんな夜勤の長い夜、俺は一つの「裏技」を編み出した。
現場では、画面をゆっくり見ている暇はない。ならば「耳」で楽しめばいい。
俺は自腹でポケットWiFiを契約し、複数のワイヤレスイヤホンを買ってきては
「現場で一番声が聴き取りやすい設定」
を必死にテストした。そうやって構築した環境で、Amazonプライムのアニメを「聴きながら」夜勤を乗り切るようになったのだ。
(ちなみに、同時期に放送されていた『お兄ちゃんはおしまい!』の賑やかな声にも随分と助けられた記憶がある)。
そんな「耳だけのアニメ鑑賞」の中で、俺を決定的に狂わせた……いや、駄目人間にしたのが『天使様』だった。
最初は、イヤホン越しに響く真昼の可愛らしい声に癒やされていた。
だが、彼女はただの可愛いだけのヒロインではなかった。
学校では「天使様」と呼ばれる完璧な女子高生。
そして、まさかのお隣さんが同級生。しかも目立たない、真昼自体も「存在くらいは理解している」男子高校生。それが藤宮周。
何事にも完璧な「天使様」
そんな彼女の口から、時折大胆な発言が飛び出す。
第2話 天使様と夕食 参照
と警戒心むき出しだった完璧な天使が、少しずつ心を許し、
私の可愛い人」
と微笑むようになる。
その過程にある彼女自身の「戸惑い」。それは決して手軽なデレなどではなく、彼女の奥底にある「寂しさ」が悲鳴を上げていた証拠だった。
俺の心に深く響いたのは、この不器用な変化の過程だ。
それが決定的に表れていたのが、真昼が初めて「ピザ」にかぶりつくあのシーンだ。

若いファンたちはあの可愛さに悶絶しただろう。
だが、俺には違って見えた。初めて食べるジャンクフードへの期待と不安。周という不器用な少年の前でだけ見せたその姿。
真昼の心に張り詰めていた「分厚い氷」がカチンと音を立てて解け始めた、決定的な瞬間だったのだ。
そもそも、俺は「甘いだけのバカップルアニメ」が見たかったわけじゃない。
この作品の根底にあるのは、周と真昼、お互いの心にある「傷と過去」だ。
俺はアニメを聴きながら、真昼の母親の冷酷な態度に、本気でどやしつけてやろうかと腹を立てた。それほどまでに、彼らが抱える葛藤は深く、重い。
▶ 第7話:秘密を分け合う信頼の約束 参照
彼らは安易に体を重ねて傷を誤魔化すような、薄っぺらい関係ではない。
お互いの心の氷を少しずつ溶かし、周囲の優しい仲間たちに見守られながら、二人で立ち上がっていく。
その美しすぎる結末が、第12話の夕暮れの中で抱き合うシーンだ。あれは俺がこれまで見てきたアニメの中でも、間違いなく三本の指に入る「最高のハッピーエンド」であり、最も美しい情景だった。

なぜ、ガス屋の親父がブログを書くのか。 自分でも完全にはわからない。だが、ただ甘いだけじゃない、この複雑で美しい「心の葛藤と救済の物語」を、誰かが大人の言葉で残さなければならないと思った。
32年間の現場で、軋む鉄の音と人間の弱さを見てきたこの目で。 彼らが不器用に温め合った「心の熱」を、俺の泥臭い人生経験というフィルターを通して、一人でも多くの読者に届けるために。俺は今日も、この新しい現場に立ち続ける。
健一:プロフィール
還暦の現場技術者・健一
札幌在住。32年間、石油業界の最前線でプラントのメンテナンスに命を削ってきた元エンジニア。
厳寒の地でボルト一つ、バルブ一つの「軋み」を聞き分けてきた経験は、今、アニメの中に生きるキャラクターたちの「心の軋み」を読み解く力へと変わった。現在は統合失調症の妹と高齢の母をケアする生活者として、日々「ままならぬ現実」と対峙している。
効率やスピードばかりを尊ぶ現代において、あえて時間をかける「手入れ」の尊さを説く。私の書く言葉は、雪の夜のストーブのように、不器用だが確かな熱を宿すと信じている。


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