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乙女心 ―― 夜間飛行の記|椎名真昼、深夜零時の抒情飛行【お隣の天使様SS】|No27

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星空とランタンの光に包まれ、白いドレス姿の少女が夜景を背景に座る幻想的なアニメイラスト ポエム
星降る夜、純粋な願いを胸にランタンを灯す隣の天使。

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M i d n i g h t   J e t   S t r e a m

乙女心 ―― 夜間飛行の記

― 深夜零時、少女の抒情飛行 ―

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――遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に心を休めるとき。
そっとページを開けば、今日という日の残り香が、まだ指先に漂っておりました。

かつての私は、誰にも見つけてもらえない小さな島のようでございました。
両親という名の航路には、私を運ぶ座席は用意されていなかった。

「要らない子」――
扉越しに落とされたその一言は、幼い胸に長い夜を刻みつけたのです。

褒められた記憶を持たぬ子どもは、いつしか自分を守るために、「天使様」という名の白い仮面を用意いたしました。

空っぽの胸を隠す、見えない鎧のようなものでございましょうか。

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けれど、時間というものは、時に思いがけない優しさで人を訪ねてまいります。

雨の日に、無骨に差し出された一本の傘。
ぶっきらぼうな声で「美味しい」と言ってくれた、あの人の飾らない一言。

それは、凍りついていた地平線の下から、
静かに昇る朝の光のようでございました。

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――そして今夜、私の胸には、これまで知らなかった小さな灯りがともっております。

誰かに完璧だと思われたいのではない。
ただ、あの人の瞳に、少しだけ「可愛い」と映りたい。

そう願うことが、こんなにも胸をくすぐったくさせるものだと、私は初めて知りました。

乙女心――そう呼ばれるものの正体は、きっとこんなふうに、
夜空にひとつだけ灯る星のような、小さくて、けれど消えない光なのでしょう。

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昨夜、私は思い切って尋ねてみました。

「清楚系と大人っぽいもの、どちらがお好きですか」

少し困ったように、けれど誠実に「清楚な方で」と答えたあの人に、私はそっと宣言したのです。

「では、あなたを惚けさせることにいたします」

――少しだけ小悪魔な言葉。
けれどそれは、この胸のなかに芽生えた、隠しきれない独占欲の、精一杯の翻訳でございました。

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そして、迎えた朝。

鏡の前で、私はどれほどの時間を費やしたことでしょう。

デコルテがそっと覗くシフォンブラウス。
ランタン袖のスリットから、レース越しに透ける二の腕。
いつもは下ろしている髪を編み込んで、うなじを見せる。
手首には、あの人が贈ってくれた、花モチーフのピンクゴールドのブレスレット。

――やりすぎだろうか。
浮かれていると、笑われはしないだろうか。

胸の奥では、不安と期待が、寄せては返す波のようでございました。

それでも、あの人のために費やすこの時間は、たまらなく愛おしい。
私の背中を押してくれるのは、ただ「喜ばせたい」という、たったひとつの純粋な願いだけでございました。

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待ち合わせの場所で、あの人の目が、ほんの一瞬、丸くなりました。

言葉を失ったように、私を見つめた、あの表情。
――私は、それを絶対に見逃しはいたしません。

「今日は髪あげてるんだな」
「どうですか」
「うん、似合ってるよ」

真っ直ぐな言葉というものは、時に、どんな長い詩よりも深く胸に届くものでございます。

浮かれていると悟られるのが恥ずかしくて、私はつい強がってしまいました。
「その、笑うなら笑ってくださいね」――そんな不器用な予防線を、あの人はふわりと解いてくださいました。

「思ってないよ。いつもより可愛いとは思ったけど」

飾らない、たったそれだけの一言。
けれど、その一言で、私の胸のなかの強がりも不安も、夜明けの霧のように溶けて消えたのです。

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――もう、学校での「天使様」がどう見られるかなんて、どうでもよろしいのです。

ただ、あの人にとっての、たった一人の「特別」でありたい。
あの人の瞳のなかに、いつまでも住んでいたい。

誰にも見つけてもらえなかったあの冷たい夜から、ようやくたどり着いた、私だけの安全な着陸地点

この胸に灯った小さな光を、私はこれからも、そっと、大切に育ててまいりましょう。

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――満天の星をいただく、果てしない光の海のなかで。
今夜も、私の乙女心は、静かに夜間飛行を続けております。

――おやすみなさい。

また、明日の空でお会いいたしましょう。

…………それでは皆様、心地よい夜の旅を。

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