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【お隣の天使様】笹の葉に、ひとひらの祈り|七夕の夜、真昼が短冊に隠した願い|No.26

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七夕の夜空の下、短冊を手に優しく微笑む浴衣姿の金髪の少女を描いた「お隣の天使様 欲張りな独占欲(小悪魔な素顔) No26」のイラスト。 ポエム
七夕の願いにそっと本音を込めた、小悪魔な笑顔が愛らしい「お隣の天使様」のワンシーン。

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S t a r f e s t i v a l   N i g h t

笹の葉に、ひとひらの祈りを

― 七夕、夜のしじまに揺れる、ひとつの願い ―

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――夜のしじまに、笹の葉が、ささやかに揺れている。

七月の宵闇。
 窓辺に吊るされた色とりどりの短冊は、まるで星の欠片が、舞い降りてきたかのよう。

そのひとつに、彼女は、誰にも見せない願いを、そっと書きつけた。
 淡いピンクの紙の上を、ペン先が、ためらいながら、けれど確かに、走ってゆきます……。

書き終えた短冊を、彼女はくるりと裏返し、胸の奥にそっと抱き寄せました。

「秘密です」――
 ささやくような声で。
 夜風よりも、もっと、密やかに。

願い事は、人に教えると、叶わなくなる――
 そう信じてきた幼い日々の名残りを、彼女は今も、大切に、大切に、抱きしめているのでした。

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かつて、彼女には、書ける願いが、ひとつもありませんでした。
 短冊を前にしても、ペンを握ることすら、怖かった日々があったのです。

「要らない子」――
 そう告げた、両親の冷たい声。

どれほど美しく咲こうとも、
 どれほど賢く育とうとも、
 誰の瞳にも映らなかった、小さな少女。

手を伸ばしても、その手を取ってくれる人は、誰もいませんでした。
 だから、彼女は、手を伸ばすことを、やめたのです。
 願うことを、諦めたのです。

空っぽの短冊のように、息を殺して、夜の片隅で、ただ静かに、生きておりました……。

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けれど、ある雨の日のこと。

傘を持たぬ彼女のもとへ、ひとつの傘が、無造作に差し出されました。
 不器用で、ぶっきらぼうで、けれど、確かな温度を持った、その手。

それから、ふたりは、湯気の向こうで、言葉を交わすようになりました。

硝子の器に注がれた、冷たい麦茶。
扇風機の風がほどけてゆくなか、あなたは言いました。
「美味しい」と。

そのひと言が、彼女の凍りついていた時間を、かちり、と動かしてゆきました。

愛されることを諦めていた少女の心に、ゆっくりと、灯がともる。
 そして気づけば、その胸の奥に、ひとつの「欲」が、芽生えていたのです。

もっと、そばにいたい。
 もっと、見ていてほしい。
 もっと、わたしだけを――

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笹の葉の裏側。
 誰からも、もっとも見つかりにくい場所に、彼女は、その小さな短冊を、そっと結びつけました。

書いた言葉は、たったの、一行。

『明日もその先も、
わたしがあなたの一番でいられますように』

それは、神様への祈りでは、ありません。
 星への願いでも、ない。

彼女がその願いを届けたいのは、ただひとり――
 隣に座る、あなたへ。

特別な奇跡など、彼女は望んでいないのです。
 ただ、明日も、明後日も、その先もずっと、この、確かな日常の中で、
 あなたが、わたしだけを見てくれること。

それだけが、彼女の、たったひとつの、欲張りな願い。

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すべての短冊を結び終えて、彼女はそっと、隣を見やりました。

窓の外の夜空を、静かに見上げる、あなたの横顔。
 穏やかで、頼もしくて、けれど、どこか少しだけ、遠くを見ている、その瞳。

伝えたい言葉は、たくさんある。
 けれど、それを声に出すには、彼女はまだ、少しだけ、臆病で。

だから、代わりに、彼女は、こう、つぶやいてみるのです。

「……少し、夜風が、冷たいですね」

そっと伸ばした指先が、あなたの服の袖を、ほんの少しだけ、つかむ。
 振り払われることのなかった、その手のひらに、ゆっくりと、確かな温もりが、伝わってまいります。

ここは、彼女の、ささやかな帰り場所。
 ここは、誰にも譲ることのない、絶対の、安息の地。

笹の葉の向こうに揺れる、夜空の星々よりも、
 あなたという光のほうが、ずっと、ずっと、眩しいから。

彼女は、袖をつかむ指に、ほんの少しだけ、力をこめて、
 夜の祈りを、心の奥深くで、そっと、結んだのでした。

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――遠い夏の宵、笹の葉に揺れた、ひとつの願いの物語。

――おやすみなさい。

どうか、よい夢を。

… … … … そ れ で は 皆 様 、 心 地 よ い 夜 の 旅 を 。

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