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真夏の夜の独白|帰る場所、隣の扉のむこうに|真昼から周へ、ジェットストリームの夜に|No25

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夕暮れから夜へ移り変わる街並みを眺めながら、クッションを抱えて穏やかに過ごす金髪の少女を描いた「お隣の天使様 帰る場所(絶対的な安全基地) No25」のイラスト。 ポエム
どんな一日も優しく受け止めてくれる、心が安心して帰れる場所を描いた一枚。

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J e t   S t r e a m   N i g h t

帰る場所、隣の扉のむこうに

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……夜風が、ひとすじ、窓を撫でてゆきます。
 遠い街の灯が、ひとつ、またひとつと、夏の宵に滲んでまいります……

第一章 黄昏のなかで

教室の窓に映っていた私は、誰の目にも完璧でございました。
 微笑みは絶やさず、声は澄み、肩には何ひとつ翳りを落とさない。
けれど、その姿は私自身が縫い上げた、見えない一枚の鎧でございました。

愛されなかった子どもが、それでも明日を生き延びるために纏う、
薄く、冷たく、そして重たい鎧。

完璧でなければ、私は私であってはならない。
そう言い聞かせて結んだリボンは、夕暮れになるたび、私の喉をそっと締めつけてゆくのでした。

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……そして、鞄の底でかすかに鳴る、ひとつの鍵。

それは、私の部屋の鍵ではございません。
すぐ隣の、あの扉を開けるための、小さな小さな約束のかたちなのでございます。

第二章 「おかえり」という名の灯

カチリ、と鍵が回る音。

その音を合図に、私の中の張り詰めた糸が、ほどけてゆきます。
重ねた一日が、肩から、指先から、静かに滑り落ちてゆくのを感じながら、私は扉を押すのです。

「おかえり」

ぶっきらぼうで、けれど確かに温度を持ったその声が、玄関の三和土に立つ私を、迎えてくれます。

……ああ、灯がともる、と思いました。
胸の奥のどこか、長いあいだ暗いままだった部屋に、ふっと小さな明かりが点る。
たったそれだけのことが、なぜ、こんなにも私を救うのでしょうか。

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ソファに腰を下ろし、貴方と肩の触れぬほどの距離に身を置けば、
教室で私が演じていた「天使様」は、もういません。

ここにいるのは、少し口の悪い、
世話焼きの、不器用な、
ただの椎名真昼

そして、その私を、貴方は何ひとつ咎めないのでございます。

第三章 遠い夜の記憶に

……時計の針が、深い時間を指し示しています。

思い出すのは、まだ鍵を持たなかった頃の私。

「要らない子」と告げた、あの人たちの背中。
家という名の建物の、けれど誰もいない、長すぎる廊下。

期待することを、私は早くに諦めました。
甘えることを、ずっと前に忘れました。
涙の流し方さえ、いつの間にか分からなくなっていたのでございます。

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そんな私の凍えた手を、ある夜、貴方はそっと包んでくださいました。

「泣くなら泣けよ」

それは、慰めではなく、許しでございました。
完璧でない私に、弱くてよいと告げる、初めての声。

「俺は割と好きだぞ」

それは、賛辞ではなく、約束でございました。
可愛げのない私のままで、ここにいてよいと差し出された、無骨な手のひら。

……あの夜、
私の空っぽだった胸の中に、消えることのない一つの灯がともったのでございます。

第四章 永遠の安全基地

紅茶の湯気が、ゆるやかに立ちのぼっています。

貴方は「俺がいないと駄目になる」と私に甘えられても、ただ少し困ったように笑うばかり。
けれど、本当に駄目にされているのは、どちらなのでしょうか。

鎧を脱がされ、強がりを解かれ、
ありのままでいることを許されてしまった私は、
もう、ここでなくては息ができない気がするのです。

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外の世界では、また明日も、私は天使様を演じるのでしょう。
冷たい雨が降ることも、心無い声に晒される夜もあるでしょう。

それでも、構わないのです。

だって、ここに帰ってくれば、
貴方の「おかえり」が、待っていてくれるのですから。

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……夜が更けてゆきます。

紅茶の香りに包まれて、私は静かに目を閉じます。
胸のうちで、誰にも届かぬ祈りをひとつ。

どうか、この灯が、いつまでも消えませんように。
どうか、この隣が、いつまでも私の帰る場所でありますように。

――おやすみなさい。

世界でいちばん静かな、私の夜に。

… … … … そ れ で は 皆 様 、 心 地 よ い 夜 の 旅 を 。

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