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【お隣の天使様】初めての看病──繋いでくれた、大きな手のひらの温もり|No6

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ピンクと白を基調とした幻想的な部屋で、天使の羽を持つ金髪の少女が大きなテディベアを抱えながら優しく微笑むイラスト。 ポエム
優しい天使がそっと寄り添い、初めての看病を届ける幻想的なワンシーン。

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F i r s t   N u r s i n g

初めての看病

― 繋いでくれた、大きな手のひらの温もり ―

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第1章 一人ぼっちだった熱の夜

幼い頃の私にとって、熱を出すことは、ただ暗闇の中でじっと耐え忍ぶだけの、孤独で苦しい時間でしかありませんでした。

私の両親は愛し合って結婚したわけではなく、ただの家庭の事情と利害の一致で一緒にいただけでした。最初から私を育てるつもりなんてなかったあの人たちは、幼い私に「困るなら産まなければよかったのにね」「要らない子」と冷酷に言い放ちました。家はあの人たちにとってただの宿泊施設に過ぎず、育児のすべてはハウスキーパーの小雪さんに丸投げされていました。

小雪さんは私にとても優しく、美味しい料理の作り方も教えてくれました。けれど、お仕事の時間になれば彼女は自分の家へと帰ってしまいます。両親は夜になっても帰ってきません。

だから、朝と夜はいつも大きな家の中で一人ぼっちでした。

高い熱に浮かされ、息をするのも苦しくて心細い夜でも、私の頭を優しく撫でてくれる温かい親の手はありません。喉が渇いても、誰かが冷たいお水を持ってきてくれるわけでもありません。泣いて助けを呼んだところで、誰も私のために駆けつけてはくれないのだと、幼い私はとうの昔に悟っていました。

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「病気の時は、暗い部屋でただ一人、じっと耐え忍ぶものだ」。
他者に甘えることや助けを求めることを最初から完全に放棄していた私は、そうやって心を凍らせ、誰に対しても完璧な「天使様」という見えない鎧を纏うことで、幾度もの一人ぼっちの夜をやり過ごしてきたのです。

第2章 クリスマスの夜、初めての温もり

あの日、クリスマスの時期の冷たい雪が降る頃、私はとうとう無理を重ねて熱を出し、倒れてしまいました。
以前、貴方が雨の中で無理をして風邪を引いた時、私は当然のように看病をしました。でも、いざ自分が倒れた時、誰かに頼るという選択肢は私の中にはありませんでした。

けれど、私が体調不良を隠して無理をしていたことに気づいた貴方は、「俺に散々休ませときながら、自分は無茶するのか。冬休みなんだから大人しくしとけよ」と少し怒ったように言いながらも、その目には深い心配の色を浮かべていましたね。

貴方は自分のベッドに私を寝かせ、買い置きしてあったスポーツドリンクや冷感シートを急いで用意し、レトルトのお粥を温めて、不器用に、でも必死に看病してくれました。

「お前がやってくれたことやり返してるだけだがな。つーか、なんで無理しようとしてたんだよ」とぶっきらぼうに言う貴方に、私は「自己管理できてないってことですし……」と申し訳なく俯きました。
貴方は「自己管理してても引くもんは引くし、お前はいっつもなんか頑張ってるんだから、体が疲れたんだろ。まあ、それが俺のせいなのは、本当申し訳ないというか」と、ご自身のせいではないのに本気で気に病んでいましたね。
「周君のことは負担だと思ったことはないです」。それが私の偽らざる本心でした。

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そして、貴方からの手厚い看病を受けながら、私はふと、ずっと胸の奥底にしまい込んでいた孤独を口にしてしまいました。

「私、誰かに看病をしてもらうの初めてです」。
「朝と夜はいつも一人だったから……」。

熱を出しても誰も助けてくれなかった過去。看病されるという経験そのものが、私の人生には存在しなかったのです。
その言葉を聞いた貴方は、過剰に同情するでもなく、ただ静かに、けれど確かな温かさを持って私のそばに寄り添い続けてくれました。貴方がそこにいてくれるという事実だけで、私の冷え切っていた心がどれほど深く救われたか、貴方はきっと知らないでしょう。

第3章 微熱の言い訳と、初めての我儘

貴方がスポーツドリンクやタオルを用意してくれ、部屋から出て行こうと背を向けた時のことです。
静かな部屋の中で、熱による心細さからか、それとも貴方の不器用な優しさに触れて理性のタガが外れてしまったのか──

私は無意識に手を伸ばし、貴方の服の袖を弱々しく掴んでしまいました。

普段の「天使様」の私なら、絶対にそんなことはしません。誰かに甘えることなんて知らなかったし、他人に我儘を言って迷惑をかけることなど許されないと思って生きてきたのですから。
けれど、その夜の私は、微熱を言い訳にして、普段なら絶対に言えない子供のような我儘を口にしてしまいました。

── 手を握っていて。

それは、分厚い見えない鎧を脱ぎ捨てた、最も無防備で弱い「椎名真昼」のありのままの素顔でした。

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貴方は私の不意の行動に少し驚いたように目を丸くしましたが、そんな私を面倒がったり突き放したりすることは決してありませんでした。

貴方は私の小さな手を、ご自分の大きな手ですっぽりと優しく包み込んでくれました。

「子供じゃないですからね」と照れ隠しのように強がる私に、貴方は「知ってる。逃げないように捕まえて見張ってるだけだから気にするなよ」と、あくまで無骨な言い訳をしてくれましたね。
「この期に及んで逃げません」と私が返すと、「どうだか。ほら、話して欲しけりゃさっさと寝ろ」と、不器用ながらもとびきり優しい声でささやいてくれました。

貴方の大きな手のひらから伝わる熱は、熱に浮かされた私の体温とは違う、とても心地よくて安心できる頼もしい温もりでした。その温もりが、私の心の奥底で分厚く凍りついていた孤独や不安を、ひとひら、またひとひらと静かに溶かしていくのが分かりました。

熱のせいにして甘えてしまった私を、ただ黙って受け止め、深い眠りに落ちるまでずっと手を握り続けてくれた貴方の誠実さに、私は心の底から救われていたのです。

第4章 ひとりぼっちの夜の終わり

その夜、貴方がずっと私の手を握っていてくれたおかげで、私は生まれて初めて、朝と夜の暗闇を恐れることなく、心からの安心に包まれて深い眠りにつくことができました。
翌朝、目を覚ました時に貴方がかけてくれた「調子はどうだ?」という気遣う言葉とホッとしたような表情を見た時、私の中で何かが決定的に変わったのを感じました。

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幼い頃からずっと一人で耐えるしかなかった、孤独で冷たい夜。誰も助けてくれないと諦め、心を閉ざしていた私の世界に、貴方という温かな光が差し込んだのです。
あの夜、私の中で、貴方はただの「お隣さん」や「お世話をする相手」から、生涯心を預けることのできる「特別な人」へと変わりました。

── ずっと隣にいるから。

と後になって貴方が力強く誓ってくれたように、私はもう二度と、一人ぼっちの夜を過ごすことはないのだと確信しています。

私が熱を出して心細かった夜、貴方が不器用に、でも絶対に離さないように繋いでくれたあの大きな手の温かさを、私はきっと生涯忘れません。

あの温もりがあるから、私はもう、過去の冷たい記憶に怯えることはありません。貴方の存在が、私にとっての絶対的な安全基地であり、唯一の帰る場所だからです。

どうかこれからも、この臆病で可愛げのない私を、その温かい手で包み込んでいてください。

――おやすみなさい。

世界でいちばん、大切な貴方へ。

今宵もどうか、穏やかな夢を。

繋いだ手の温もりが、今もここに残っています。

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