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M i d n i g h t D i a r y
臆病な幸福
― ソファのうえ、0センチに満たない距離で ―
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夜の帳が、そっと窓辺に降りてきました。
6月18日。
街の灯りは遠く、時の流れも、どこか緩やかで……
今宵もまた、隣の部屋から漏れてくる、あの人の気配だけが、私の世界のすべてです。
夕餉の器を洗い終えた指先に、まだ少しだけ温もりが残っています。
「美味しい」と、まっすぐに告げてくれた、あの低い声。
ただ、それだけのことが、私の胸の奥で、小さな灯火のように、ずっと揺れているのです。
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──幼い日、私の手は、誰にも取られませんでした。
伸ばした指先は、いつも空を切り、やがて私は、手を伸ばすことそのものを、忘れていきました。
天使様、と、人は私を呼びました。
けれど、その仮面の下で、私はずっと、一人きりだったのです。
そんな私に、あなたは、何気なく差し出してくれましたね。
温かいお茶のような、ありふれた優しさを。
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ソファの上、私たちの間には、ほんの数センチの距離。
肩が、触れそうで、触れない。
吐息が、届きそうで、届かない。
このもどかしさを、いつしか私は、幸福と呼ぶようになりました。
もっと、近づきたい。
けれど、一歩を踏み出せば、この夢のような時間が、音もなく崩れてしまうような気がして……
私はまだ、臆病な小鳥のように、あなたの隣で、ただ羽を休めているだけ。
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── ずっと、隣にいるから。
あなたがくれた、その短い言葉を、私は胸の奥に、そっと仕舞っています。
夜ごと、くまのぬいぐるみを抱きしめながら、その言葉だけを、お守りのように、繰り返すのです。
いつか、必ず。
この臆病な距離を、私のほうから、ゼロにしてみせます。
あなたがくれた、たくさんの温もりに、私自身の言葉で、応えるその日まで──
――おやすみなさい。
世界でいちばん、大切なあなたへ。
今宵もどうか、穏やかな夢を。
夜空の向こうで、星が一つ、静かに瞬いています。
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