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夜のしじまに、あなたへ ― 安全基地という名の港|13

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窓辺でくまのぬいぐるみを抱えながら微笑む天使のような少女。淡いピンクと白を基調にした幻想的で可愛らしいイラスト。 ポエム
天使のような無防備さと優しい微笑みに心が癒される幻想的なワンシーン。

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M i d n i g h t   J o u r n a l

夜のしおり
― 安全基地という名の港 ―

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…遠い空のどこかで、今夜もひとつ、星がまたたいているのでしょう。

機窓の向こう、雲海の彼方に揺らぐ街の灯のように、
人の心の奥にも、誰にも見せない小さな灯が、
ひとつ、ともっています。

…こんばんは。
今宵お届けするのは、ある少女のしおりから紡がれた、
静かな夜の手記です。

仮面、というものを、あなたはご存知でしょうか。
人は、傷つかないために、優しさという布で顔を覆うことがあります。
微笑みという名の、薄い、けれどとても重い布で……。

…彼女もまた、そうでした。

「天使」と呼ばれるたび、胸の奥に積もっていく、見えない雪。
誰にも踏まれることのない、白く冷たい雪の庭で、
彼女はひとり、長いあいだ立ち尽くしていたのです。

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…雨の日のことでした。

差し出されたのは、傘ひとつ。
ぶっきらぼうな声と、不器用な指先。

「風邪、引くから」
――ただ、それだけの言葉。

けれどその短い一節が、長く凍っていた庭に、
ひとひらの春を運んできたのです。

…人は、たったひとつの優しさで、生まれ直すことができる。
そんなことを、彼女はそのとき、初めて知ったのかもしれません。

˚ ༘ ೀ ⋆ 。 ˚ ✩ ˚ 。 ⋆ ೀ ༘ ˚

夜が更けて、灯りを落とした部屋の片隅。
膝の上に預けられた、誰かのあたたかな重み。
指先をすべる、やわらかな髪。

…静かに、ゆっくりと、
規則正しい寝息が響きはじめます。

世界でいちばん近い距離で、
世界でいちばん遠い場所まで、心を委ねきった人のかたち。

それは、「信じる」という言葉の、
いちばん美しい形なのでしょう。

…かつて、信じることに傷ついた人が、
ふたたび誰かに身を預けるまでには、
長い長い夜があったはずです。
その夜の長さを、彼女は知っています。
だからこそ、いま膝の上にある、
この穏やかな寝顔の意味も、痛いほどに。

…ひとはきっと、
誰かを駄目にしながら、誰かに駄目にされながら、
ようやくひとつの港にたどり着くのですね。

˚ ༘ ೀ ⋆ 。 ˚ ☼ ˚ 。 ⋆ ೀ ༘ ˚

翌朝の光は、いつもより少しだけ、
やさしかったのだそうです。

ソファの毛布、運ばれたぬくもり、
触れずに守られた一夜の距離。

その慎ましさのなかにこそ、
本当の優しさは宿るのだと、
彼女はそっと書き留めました。

帰る場所がある、ということ。

それは、夜空を渡る翼にとっての、
滑走路の灯のようなものなのかもしれません。

どれほど遠くへ飛んでも、
どれほど高く昇っても、
あの灯の方角を知っているだけで、
人は迷わずに生きていける――。

…遠い夜の窓辺で、
今宵もきっと、誰かが誰かの寝息に、
そっと耳を澄ましていることでしょう。

世界でいちばん、安心できる場所で。
世界でいちばん、大切な人の隣で。

…おやすみなさい。

よい、夜を。

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