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【お隣の天使様】真昼の甘い独白|アイスより先に、心が溶けた夏の夕べ|No32

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夕焼けの南国ビーチでドリンクを手に微笑む金髪の少女と、「お隣の天使様 No.32」の文字が描かれたアニメ風イラスト ポエム
夕陽に染まる海辺で無防備な笑顔を見せる、お隣の天使様。

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S u m m e r   N i g h t   D i a r y

夜のしずくに溶けて

― ポエム風日記 ―

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――今宵も、静かな夜が窓辺に降りております。

 街の灯りが、ひとつ、またひとつと、まぶたを閉じてゆく時刻。
 あなたの隣に座っていると、昼のあいだ身にまとっていた重いドレスが、まるで薄雲のように、ふわりと肩から滑り落ちてゆくのです。

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「天使様」

 人々がそう呼ぶ私の名前は、ほんとうは、氷でできた小さな鎧の名前でした。

 誰にも触れられないように。
 誰にも壊されないように。
 ひとりの夜を、ひとりで越えてゆけるように。

……そうやって、私は、私を守っていたのです。

 けれど、あなたの部屋の扉を開けるたび、その鎧は、静かに音を立てて解けてゆきます。

 やわらかな灯りの下で、あなたは私を、ただの女の子として迎えてくれる。
 完璧でなくていい。
 微笑まなくていい。
 うつむいたままでもいい。

――そのひと言が、どれほど深く、私の胸の奥に灯を点したことでしょう。

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銀のスプーンが差し出された夕暮れ

 夏の匂いが、開け放した窓から忍び込んできた夕暮れ。
 あなたの手のなかで、小さなアイスクリームが、ゆっくりと汗をかいていました。

 カカオの香りに、私の視線が、ほんの少し、迷子になってしまう。
……そんな私に、あなたは何も言わずに、銀のスプーンをそっと差し出してくれましたね。

「あーん」――。
 たったそれだけの言葉が、夜間飛行の翼のランプのように、私の胸のなかで、点滅していました。

 戸惑いよりも早く、口を開けてしまう自分がいて。
 ためらいよりも先に、あなたを信じている自分がいて。

 舌の上に広がる、ほろ苦い甘さ。
 冷たいはずのそのひとくちが、どうしてこんなにも、あたたかいのでしょうか。

……たぶんそれは、あなたの不器用な優しさが、アイスよりもずっと先に、私のなかで融けはじめていたから。

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 目を細めて、へにゃりと笑った私の顔を、
 あなたはひとつ、まばたきをして、それから、頬にほのかな夕焼けを浮かべました。

「……全部やる」

 スプーンを押しつけて、コーヒーの豆へと逃げてゆく、その背中。
 落ち着いているはずのあなたが、私のためだけに、少しだけ、慌ててくれる。

――ああ、その不器用さを、私はきっと、一生忘れないのでしょう。

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鍵の要らない場所

 両手に抱いた、小さなカップ。

 そこにあるのは、溶けかけたチョコレートと、
 そして、この世でいちばん静かで、いちばん確かな、
 私たちだけの時間。

 外の世界では、私は今も、氷の鎧をまとって歩きます。

 けれど、この部屋の扉の向こうにだけ、ひとつ、鍵の要らない場所がある。

 そのことを知っているのは、夜空の星と、私と、あなただけ。

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……アイスよりも先に、心が溶けてしまうなんて。
 こんな夏の夕べを、私は、ほんとうに知らなかったのです。

 それでは、おやすみなさい。
 あなたのいる夜が、どうか、やわらかな夢に包まれますように。

――遠く離れた あなたの街へ、

この日記を、そっとお届けいたしましょう。

…………それでは皆様、心地よい夜の旅を。

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