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S u m m e r N i g h t D i a r y
夜のしずくに溶けて
― ポエム風日記 ―
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――今宵も、静かな夜が窓辺に降りております。
街の灯りが、ひとつ、またひとつと、まぶたを閉じてゆく時刻。
あなたの隣に座っていると、昼のあいだ身にまとっていた重いドレスが、まるで薄雲のように、ふわりと肩から滑り落ちてゆくのです。
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「天使様」。
人々がそう呼ぶ私の名前は、ほんとうは、氷でできた小さな鎧の名前でした。
誰にも触れられないように。
誰にも壊されないように。
ひとりの夜を、ひとりで越えてゆけるように。
……そうやって、私は、私を守っていたのです。
けれど、あなたの部屋の扉を開けるたび、その鎧は、静かに音を立てて解けてゆきます。
やわらかな灯りの下で、あなたは私を、ただの女の子として迎えてくれる。
完璧でなくていい。
微笑まなくていい。
うつむいたままでもいい。
――そのひと言が、どれほど深く、私の胸の奥に灯を点したことでしょう。
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銀のスプーンが差し出された夕暮れ
夏の匂いが、開け放した窓から忍び込んできた夕暮れ。
あなたの手のなかで、小さなアイスクリームが、ゆっくりと汗をかいていました。
カカオの香りに、私の視線が、ほんの少し、迷子になってしまう。
……そんな私に、あなたは何も言わずに、銀のスプーンをそっと差し出してくれましたね。
「あーん」――。
たったそれだけの言葉が、夜間飛行の翼のランプのように、私の胸のなかで、点滅していました。
戸惑いよりも早く、口を開けてしまう自分がいて。
ためらいよりも先に、あなたを信じている自分がいて。
舌の上に広がる、ほろ苦い甘さ。
冷たいはずのそのひとくちが、どうしてこんなにも、あたたかいのでしょうか。
……たぶんそれは、あなたの不器用な優しさが、アイスよりもずっと先に、私のなかで融けはじめていたから。
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目を細めて、へにゃりと笑った私の顔を、
あなたはひとつ、まばたきをして、それから、頬にほのかな夕焼けを浮かべました。
「……全部やる」
スプーンを押しつけて、コーヒーの豆へと逃げてゆく、その背中。
落ち着いているはずのあなたが、私のためだけに、少しだけ、慌ててくれる。
――ああ、その不器用さを、私はきっと、一生忘れないのでしょう。
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鍵の要らない場所
両手に抱いた、小さなカップ。
そこにあるのは、溶けかけたチョコレートと、
そして、この世でいちばん静かで、いちばん確かな、
私たちだけの時間。
外の世界では、私は今も、氷の鎧をまとって歩きます。
けれど、この部屋の扉の向こうにだけ、ひとつ、鍵の要らない場所がある。
そのことを知っているのは、夜空の星と、私と、あなただけ。
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……アイスよりも先に、心が溶けてしまうなんて。
こんな夏の夕べを、私は、ほんとうに知らなかったのです。
それでは、おやすみなさい。
あなたのいる夜が、どうか、やわらかな夢に包まれますように。
――遠く離れた あなたの街へ、
この日記を、そっとお届けいたしましょう。
…………それでは皆様、心地よい夜の旅を。
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