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M i d n i g h t D i a r y
究極の無防備
― 夜のしじまに、寄り添うふたつの呼吸 ―
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夜が、しずかに更けてゆきます。
窓の外には、ささやかな街の灯。
そのひとつひとつに、誰かの夕餉があり、誰かの安らぎがある。
けれど、ここにある灯りは、世界中のどこにもない、ただひとつのもの。
ふたりだけが知る、小さな部屋の、やわらかな光です。
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一、ささやかな約束
成績の発表された日。
彼の順位は、六位でした。
ひたむきに机に向かい続けた、その横顔を、私はずっと見ていました。
「十位以内に入れたら、
何でも言うことを聞いてあげますよ」
そんな約束を交わしていた、あの日のこと。
彼が、ためらいがちに口にしたのは、
膝枕、というささやかな願い。
不器用な人。
誰よりも誠実で、誰よりも、自分に厳しい人。
そんな彼が、私の前でだけ見せてくれる、小さなわがまま。
それが、どれほど愛おしいものか――
言葉にしてしまえば、こぼれ落ちてしまいそうで、私はただ、微笑むことしかできませんでした。
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二、膝の上の、しずかな夜
夕食の片付けを終え、夜が、ふたりのものになるころ。
ソファに腰を下ろし、自分の膝を、そっと叩いて誘います。
彼は、少しだけ顔を赤らめながら、ゆっくりと、私の腿に頭を預けてくれました。
薄いタイツ越しに伝わる、確かな重み。
そして、ほのかな温もり。
耳かきを、そっと滑らせます。
痛くないですか、と尋ねれば、
「気持ちいい」と、力の抜けた声が返ってきました。
普段は決して、自分を委ねることのない人。
その人が、今、私の膝の上で、すべての鎧を脱いでくれている。
胸の奥が、しずかに、しずかに、揺れていきます。
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三、究極の無防備
やがて、耳かきの音も止み、
私の指が、彼の髪を、やさしく梳いてゆくころ。
規則正しい寝息が、聞こえはじめました。
葛藤していた理性の糸が、ほどけてゆく音。
それは、夜だけが知っている、ひそやかな音楽です。
覗き込んだ寝顔は、あどけなく、
学校では決して見せることのない、無防備なもの。
世界中で、私だけが知っている、この顔。
特等席で独り占めしている、この時間。
ささやかな、けれど確かな、優越感。
そして、それよりもずっと深く、胸を満たしてゆく、愛おしさ。
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四、似たもの同士の、安全基地
かつて、人を信じることに、傷ついた人。
かつて、人に愛されることを、諦めた人。
ふたりは、よく似ていました。
だからこそ、お互いの前でだけは、
弱さを、ためらいなく曝け出すことができるのです。
言葉ではいつも、
「私がいないとダメになってしまいますものね」
そう、からかってみせるけれど。
本当は、彼がいなければ、
駄目になってしまうのは、私のほう。
彼の穏やかな寝息に包まれているうちに、
私もまた、まどろみの海へと、しずかに誘われてゆきました。
夜は、ふけてゆきます。
ふたつの呼吸が、ひとつのリズムで、重なってゆきます。
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五、朝の光のなかで
朝。
目を覚ますと、私は、彼のベッドの中にいました。
彼は、ソファで眠っていたのです。
照れたように、けれど誠実に、彼は言いました。
「他意はない。何もしてない俺に感謝してほしいくらいだ」
不器用な、その言葉のひとつひとつが、
夜のあいだに彼が私を抱き上げ、運んでくれた、そのやさしさのすべてを物語っていました。
人を信じることに臆病だったふたりが、
誰にも明かせない無防備を、お互いに預け合える場所。
それは、もう、どこにも失われることのない、
ふたりだけの、安全基地。
朝の光が、彼の寝顔を、そっと照らしています。
私は、しずかに、心の奥で誓いました。
これからも、ずっと――
甘やかし、甘やかされる関係でいられますように。
夜が明けて、また、新しい一日が、はじまります。
――おやすみなさい、そして、おはようございます。
世界でいちばん、大切なあなたへ。
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